悲しいことがあった。
身近な人との、別れ。
死んだと聞いたのは、木曜日の夜だったか、そのくらい。
その数日前に、病院に運ばれたとは聞いている。そこから、大した治療も出来ずに、そのまま。
頭では、それが寿命だった、苦しまずに逝けてよかった、そんなことを思うけど、
やはり寂しいよ。
実際、いなくなる数日前まで自宅で過ごせていたのだから、恵まれた方なんだと思う。
ここ数年、会うことはしなかったけど、もう二度と会えないと分かると、やはり悲しい。
その日、一人の夜を過ごして、泣いていた。
最初、特別悲しい訳ではなかった。話を聞いた時も、ただ普通に受け入れていたはずだ。
何の言葉もなかった。
順番通りに生が始まって、順番通り終わりがやってきた。ただ、それだけ。
なのに、涙が滲んできて、ああ、もういないのか、と思うと、わずかに開いた口が震える。
口を開けて、言葉にならない鳴き声をあげた。
泣いては止んで、止んではまた泣いて。
1時間くらい、トータルで泣いていた気がする。
お別れには行けなかった。
私は、葬式とかって、好きじゃない。
本当はもっと、別れを惜しんだり、悲しみにくれたりしたいのに、まるで何かを急かされているかのように、手続きだの、式だのと、まるでプログラムをなぞるように実行していく。
何度か行ったことはあるけれど、泣きたいのに、周りが気になって泣くに泣けない。
そんな雰囲気も、それを気にしてしまう自分も嫌い。
涙をせき止める、昔はそれが当たり前にできていたことだったのに、今は、それをしたくない。
泣きたいときに、泣きたい。
あれだけ泣いたのに、想像したら、また泣いてしまう。
お別れに行けなかったのは、現実を突きつけられたくなかったからなんだと思う。
亡骸や、遠くに行ってしまった遺影を見たら、きっと涙で決壊してしまうから。
もう、馬鹿みたいに泣崩れてしまいそうで、それが怖かった。
一人ならともかく、周りに人がいる中で、それができるほど、私は強くない。
そんな私を見られたくなかった。
一人、布団にくるまって、いつまでも泣いていたかった。
そんな感情に浸って、気の済むまでそこにとどまっていたい。
涙で終えてはだめよ きっと笑って箱を閉じて
だって時間と人も流れてくの
素直に受け止めて
岡崎律子~いつでも微笑みを~より