さっそく読んでみた、『世界に「かゆい」がなくなる日』。
まず「痒み」ってのは、まだよく分かってないことだらけの感覚であること。
多くの医者は、痒みは「異物が身体に触れている」ことを察知して払いのけるため、なくてはならない感覚だと言っているが。
確かにそうかもしれないけれど、洋服を着ることになった我々人類にとって、はたしてその感覚は進化しても必要だったのか。
いや、衣服をまとう人類になった歴史の方が浅いから仕方がないのだけれども。
とにかく現代人にとって、痒みは結構つらい感覚です。
どうしようもない時、痛みの方がマシだとさえ思えるんだから。
皮膚についてまとめよう。
皮膚は4つの層から成っていて、どんどん下から新しい細胞が押し上げられてくるイメージ。
ちなみに一番上の皮膚細胞は、すでにもう死んだ細胞です。
そんな細胞であっても、ちょっと何かが触れただけで分かるくらい神経ってのはすごく繊細な反応をするんですねぇ。
ちなみに読んでいてショックだったのが、若い人は皮脂が多いから皮膚の上に水がかかっても、弾くことができる。
皮脂ってのは油なので、水と油は混ざらないのが常識ですがまさにその通り、水が丸くなって皮膚を伝ってシュッと流れるという。
これが年を取ることで、水が長く伸びた状態で皮膚上を留まるという。
つまりは、皮膚は水分を弾いている。
(それなら、化粧水は一体何を浸透させているのか・・・?
あれって、沁み込んでいる訳ではないんですねぇ。
その場に留まることで保湿しているイメージ。でも結局水分だから飛んでいく)
でも、人間の身体はほとんどが水分でできているように、皮膚にも水分がもともとあって。
水分を引き付ける役目のある体内成分が、水分をいい感じに保持してくれている訳です。
この成分が少なければ、当然水分はとどまらず乾燥状態になります。
本書では、「皮膚は水浸し状態」と言ってます。
皮脂が適度にあって、水の吸着成分があるおかげで、しっとりした肌ができるのです。
この水浸し状態は、いわばバリアなのです。
で、この状態が崩れて乾燥状態(保持水分が少なくなる)になると、バリアが崩れてしまう。
この状態になると、皮膚は必要以上に敏感になるのだそう。
なぜなら、どういうわけか神経が伸びてしまうから。
神経の末端が皮膚の上の方まで伸びてくるので、当然ながら、ちょっとした刺激にすら敏感に反応してしまい、痒みを感じやすくなるのだという。
正常な状態だと、伸びたい神経と縮みたい神経のバランスが取れているから、ちょうどいい状態に保たれてるそうです。
これが乾燥すると、伸びたい方が有利になるんだなー(なぜなのか)
私個人の読みだと、皮膚に異常が起こってるから、ちょっとでも神経を表に出して状況を把握しようとする意思が働いているような気がする。
普段は地下に潜っているモグラが、なんか地表に異常を感じ、地上から顔を出してあたりをキョロキョロしてるようなイメージが浮かんだ。
うん、でもまあ、やはり痒みについては、はっきりした確実な治療ができないのが難点。
なんせ色んな要因があるから、この成分さえどうにかすれば!というのが通用しないんですね。
でもおもしろいことに、痒みは感覚としては割と下位に位置するので、痛みを感じることによって痒みよりも痛みに意識が向くらしい。
だからこそ、蚊に刺されたところを爪で十字に痕を付けることで痒みを抑えるという子どもの頃に教わったやり方は、実はすごく科学的だってのは興味深い。
痛いところを擦ることで、痛みが退くのも同様に。
痒みは冷やしたらいい、というのも、そういう原理があったんですね。
でも、それでも結局、いい治療法ははっきりとは断言できず。
個々人に「合う」方法を辛抱強く見つけるしかないらしい。
皮膚の乾燥は、年を取って皮脂が減れば減るほど、肌の水分が保てなくなる。
だから年を重ねるごとに痒みと付き合っていかなくてはならない。
これはもう宿命だ宿命。
人類は、痒みから逃れられない。
できるのは、保湿だけ・・・!
『世界に「かゆい」がなくなる日』
髙森建二・柿木隆介