無職ボランティアはクズなのか(働かないふたり)

吉田覚氏の「働かないふたり」という漫画。

この漫画がすごく好き。

漫画喫茶に置いてあって、オンライン講座があるたびに個室を借りて、その合間に読んでいる。
とりあえず先日、配架されている24巻まで読み終えたので、ちょっと考えたことをザザーと書き出した。
(2022年4月時点で、25巻まで発売中)

この漫画、最初はしょーもない無職の兄妹のしょーもない日常話なんだけど、ちょっとずつ広がっていきます。

最初は二人だけの世界だったのが、次第に友人、そしてご近所へと、その枠組みが広がっていく。
9割がただのギャグ。ニート妹の日常を誇張しただけの話なんだけど。

こんなにシンプルな話なのに、どうしてこんなに刺さるのか。

それは多分、みんな何かが間違ってると分かってるけど、見ないようにしてるというか。
なんだろうな、人として基本的なことを、改めて教えられているから、ちょっとだけ痛いのか。。

 

この兄妹が素敵だ。

妹・春子は、実に優しい。

人を放っとけない。友人に対して、とても素直で正直。

性格的に、ちょっと今の世の中を生きていくのに向いていない、それを本人も分かってる。
でも、優しい子。春子がダメなのでなく、春子のような子が生きにくい社会が、今の日本社会だということ。というか大人社会。

兄・守はすごい。多分、この子が主人公。というか中心にいる。

ホントこの子は若いのに、まるで隠居した魔術師のような、仙人みたいな存在。

この兄がいなければ、きっと人々はみんな個々で孤独だった、そんな人が多い。
それを繋げていったのが兄。

この兄を中心に、いろいろ考えた。

 

生きることの目的が、誰かのためになること、貢献することというのなら、兄は間違いなく目的を果たしている。

そして仕事が「人に仕えること」ということから、人の役に立つことならば、それも当然果たしている。

彼は近所で孤独な老人を救ったり、子どもと一緒に遊んであげたり。子育てに悩む主婦の話を聞いたり。。

それによって立ち直った人、救われた人が数人いる。間接的な部分も入れると、実はもっと大勢。

ただ残念ながら、彼がやっていることはお金はもらえない。しかし、間違いなく世の中に必要な人間だ。

ただ念を押すが、仕事という「お金を稼ぐ」ことは何もやってない。
だから無職。
たまに漫画を描いて入賞してるくらい。あと書評ブログをやっている。

現実世界でもそうだけど、この漫画でも無職ってだけでNGという思想を持った人は当然存在しており、いくらいい人間でも「仕事をしてない時点で社会のクズ」と言っている人間も当然ながらいる。

それは、お金を稼いでないからクズなのか、税金を納めてないからクズなのか。

仕事をしてないと、どうしてクズなのか。

お金を稼いでも、じゃあ投資なんかで指先ひとつでお金を動かしている人間はクズなのか。
食べ物を作っている人間はクズじゃないのか。
人をだましてお金を稼いで、税金を納めている人間はクズじゃないのか。
好きなことだけやって共感と名声を得ている人間はクズなのか。
みんなが嫌がる仕事を嫌々やっている人間はクズじゃないのか。
人に命令だけしてる役員はクズじゃないのか。

・・・もはや何が何だか分からなくなってくる。

 

クズってなに。

お金だけめっちゃ稼いでいれば、人としてクズでもクズ認定されないのか。

人として素晴らしくても、お金を稼いでなければクズ認定なのか。

そもそもお金を稼ぐことは、なんでそんなにエライのか。

沢山税金を納めているから?
消費をいっぱいして社会を回してくれるから?

じゃあ、節約してあんまりお金を回さない倹約家は、ののしられる存在なのか。

いろんなことを、立ち止まって考えてしまう。

直接お金は稼いでなくとも、社会を回すのに必要な人材。

それって政治家と同じではないのか?
政治家はお金を直接稼がない。
でもエライと言われるのは、どうして。

「国民のために」なんて言って何やってるか分からない政治家よりも、何も言わずに地域の方々に直接貢献している兄の方が、はるかに役に立っているというのに。

しかも彼は、みんなからお金をもらっていない。
完全なボランティアだ。

もし彼がやってることに対してお金をとり出したら、たちまち彼は逆に人でなしになってしまう。

でもお金をそれでいただき始めたら、彼は一応は無職から抜け出せることになる。
そうなれば、彼はクズじゃなくなるのか?

なら、無償で働くボランティアはクズの集まりなのか?仕事を持ってる人なら賞賛され、無職だと分かった瞬間クズ扱い?

ボランティアだと思って助けてもらっていたら、最後にお金を徴収し始めた方をクズと呼ぶのではないのか?

・・・ほーら、思考の迷路にハマってしまう。

 

では、仕事ってなんなのさ。

欲しい人がいる、それを作る、届ける、売る、そうした人様の役に立つことでお金をいただくのが仕事だ。

ある意味、それを代わりにやるからお金を頂戴ねっていうのが仕事。できない誰かの代わりに私がやります、これが仕事。

これがモノだと分かりやすいが、サービスではどうだろう。

こんなサービスあったらいいでしょ、やってあげるから代わりにお金を頂戴ね。がサービス業だとして。

こんなサービスあったらみんな楽しいでしょ。やってあげるけどお金は要らないよ、好きでやってることなんで。

っていうのが無職(兄)だとしたら、なんでそれがクズになるのかが分からない。

無職で迷惑かかってんのは、あくまでその家族だけでしょうに。そんな家族のことを、人様が深く考えるかフツー?

やっぱりクズ認定は、税金を納めてないからとしか、言いようがない・・・


ま、多分そういうことなんでしょうね。(じゃあ、その税金を無駄にしてる政治家は何なんだ?)

働きもせずに生活保護で楽してお金をもらうことが、働いて税金を納めている側からしたら、面白くないことですもんね。

やっぱり無職クズ説は、そういう「こっちが苦労してんのに、お前ら楽しやがって・・・」という嫉妬みたいなものだとしか、説明ができない。

でも、なんか納得もする。

専業主婦も、子育てをやっている方だったら、ほほえましく見ていられる。

別に税金を納めてなくてもね。何なら扶養に入ってる分、払う分安いってのに。

でもそれは、子どもを育てることがどれだけの重労働かを、多くの人が知っているから。

人ひとりを育てる。まさに、「人に仕える」じゃないの。
人を育てるのも、役割の1つだと認識されているからである。
お金こそ稼いでいないけれど、重要な役割を果たしている。社会的な、ね。

皆が平等に役割を果たす共同社会。

そりゃサボってる人がいれば、おもしろくない気持ちになりますもんね。
「自分はこんだけ頑張ってるのに・・・(だから、みんなも平等に苦労しやがれ)」

これが本音でしょう?

無職がどんな役割を果たしているのか・・・?

あの地域の一部の方達は、兄が大きな役割を果たしていると知っているから彼を罵ったりはしない。彼の果たす役割を知らない人は、平気でクズ扱いするけど。

 

まあ、そんなことを改めて考える漫画なんですよ。

だてに25巻まで続いてないですからね。
相当だよ無職の人間の生活圏内だけで25巻て。
25巻もあれば、少年漫画だと2つくらいの冒険が終わってるよ。

いやでも、本当にちょっと泣けるし、気持ちが込み上がるシーンが、ホントたまにあるんすよ。。

9割くっだらない話なんですけどね。

くだらない漫画なんだけど、なんかこう、来るんですよ。

ほら、ギャグだと思ってたら、最後なんか深い話で終わったっていう漫画とかありますやん。銀魂とか。

これを最後まで読んで、どういう感想を持ったのかを日本国民全員に聞いてみたい。
きっと、「くっだらない」と吐き捨てるでしょう。それも仕方ない。

最後に、そんなくだらない漫画の中で好きなエピソードでも。

・近所の老人・飯塚さんが出てきたあたり
・ユキちゃんの父と母の馴れ初め話

働かないふたり