時にひきこもる思考

考察とnikki 一言で言えば、ただのエッセイ

腸に翻弄される①(「腸と脳」感想)

今度は、こんな本を借りてみた。

その名も「腸と脳」。なんてシンプルなタイトル。

腸と脳

シンプルだけど洗練された装丁

なんというか、私は最新の医学本を拾い読みして摘まむのが好きらしい。

まあ健康ってのは話題に事欠きませんし、誰しもが絶対に向き合わざるを得ないので、知ってて損はない。

とはいえ今回の本は腸やら微生物の話なので、食事の席には向きませんが。

恥ずかしい話だけど、父親がしょっちゅう腹痛に悩まされてる人でして。
それはもう、随時トイレの心配をしないといけない人で。

そういう血を受け継いでいる私自身、そんな父親ほど狂った腸をしている訳ではないけれど、それでも便秘を繰り返したり(これはホルモン関係もあるけど)、新しい環境に腸が馴染むまで2週間がかかったりと。

色々と不便な生活があったりするのです。

この本に出てくる症例でも、過敏性腸症候群(いわゆるIBS)だったり、うつなどの慢性疾患が取り上げられていて。

私自身にとっても身近な話ということで、興味深い本でした。
(そもそも健康な人は、こういう本をまず手に取らない)

 

さて、かいつまんで内容を紹介しましょう。

まず結論から言いますと、腸と脳は繋がってます。
腸は「第二の脳」と言われてるくらい、神経細胞が多い。

でも、その割には腸と脳の関係については研究がなされておらず、今回の本で驚くべき事実は多いことと思います。

というのも、その研究自体、10年ちょっとの歴史ですから。

これまでの医学では、身体はそれぞれの器官が別個で機能しているものという見方が強かったため、そこに特有の薬を飲めば、あるいは切って捨てれば、な治療を主にやってきたけど。

人体は全体でもって機能している1個の塊みたいなもんですから、そんなネジやパーツを挿げ替えれば再び動き出すような車とは、まったく異なるわけです。
それが現代医学の挑戦です。

特に脳の疾患(アルツハイマー病とか)や、前述した慢性疾患への治療は、まだまだこれから、、というところ。

 

本書では、腸がいかに脳へ作用してるかを専門用語も交えて書かれており理解に苦しむので、簡単にまとめますと。

腸には、微生物が無数存在していて。

そういう微生物が、消化を支援したり、化学物質の処理・解毒したり、病原菌の侵入を阻止したりしている。

実はこれら微生物の構造ってのは、人によって異なります。
生まれ育った国、食生活でも異なり、それらは生まれ落ちて2歳3歳の内である程度決まってしまうと。

腸内細胞はシグナルを脳に向けて出し、それを脳が受け取る。
そして情動を起こす、と。

そういうサイクルができているので、例えば胃が空になると何かを食べるように脳が信号を出すし、逆に満腹になると「これ以上食べるな」と、これまた信号を出すのです。

蓋を開けてみたら、まったくその通りな話なんですけど。

よく、緊張したらお腹を壊す人がいるけれど、あれだってそう。

外的ストレスを受けると、脳から特定の信号が出されるので、それを受け取った身体に影響が出る。

例えば動悸がしたり、発汗、内容物を除去しようと腸に働きかけるので、お腹が痛くなったり。

でもこれらって、自動で発動するプログラムであり、それは遺伝子に書き込まれているので、本人にはどうしようもないです。

そういった遺伝子に書き込まれたものって、闘争の時代には役に立つメカニズムだったけど(いちいち認識してからじゃないと動けないと食われるし、いちいち親が子供に危険を教えていたのでは手間なので)、平和な現代には結構な負担。

肌もそうだけど、かつては有効に働いた身を守る術は、現代では厄介者でしかなかったり。

hikikomoru-shikou.hateblo.jp


こういった反応は遺伝によって人様々なので、同じストレスを感じても何ともない人がいる一方、毎回トイレに駆け込む、毎回手汗が止まらない人がいてもおかしくないってことです。辛い。罰ゲームだわ。

遺伝なので、両親から受け継いでるってことですし。

うちの父親が、なぜそんなにもトイレに駆け込むかは謎だけど、腸そのものに問題が、
というよりは脳がストレスを受けて自動的に腸が反応してる可能性は高いですね。

いずれにせよ、過敏なのは間違いない。

もちろん遺伝子からだけでなく、以前紹介した本でもあったエピジェネティックな仕組みからも、IBSなどの症状が受け渡される可能性はあります。

いずれにせよ、悲劇なもんです。

 

つづきます