時にひきこもる思考

考察とnikki 一言で言えば、ただのエッセイ

スーツ姿が許せない(着せる女)

最近読んだ、面白い本。

身近な出版社の知り合い男性に、著者である内澤さん(女性)がスーツを選ぶ手伝いをするという、そんな企画をまとめた本書。

この人の文章がさぁ、いいんだよね。さくらももこを彷彿とさせるユーモラス感。さくらももこのエッセイは、結構好きだったのよ。もう読めないんだけど。

スーツには、全くと言って縁がないけど、服を選ぶ内容と、この人の書く文章のおかげで、楽しく読むことができた。

とはいえ、他人のスーツを同行して買いに行くというそれだけの内容を、あの長さで一気に一冊の本として読むのは、ちょっと苦痛だ。飽きてくる。もともと連載だったみたいなので、やはり一気読みには向かなかった。

 

スーツはなぁ。まあ、縁がないな。

体型が微妙だから、どうしてもスラっと背が高い人と比べてしまうんだよ。

ジャケットの裾が長いでしょ。かといって、小さいサイズだと、肩や胸がキツイ。

背は低くても、腕・肩・胸・腹周りは、一般人と変わらないサイズなのだ。だからこそ、「あれ、意外と背が低い」みたいな不思議なことが起こりうる。

そう、背だけが低い。後は平均以上。

全体的なサイズ感もそうだし、今はそんなに抵抗はないけど、タイトスカートも、高校生のプリーツスカートから無理やり大人にされたみたいで苦痛だった。

はじめてのスーツは、高校3年生、受験直後で肥えていた時期に買ったやつ。これが微妙でさぁ。シャツは紫のストライプで、それだけは洒落てたけど。

しかも後で見た写真には、足が短く、上半身ばかりがデカい、気持ちの悪い自分が写っていた。もっとも、それは角度にも問題あったけど。

 

これが上記にも書いた、私の悩みさね。

上半身の立派さ。対して下半身の貧相さ。いや、腰回りはめっちゃ大人やけど。

就職活動用のスーツも同じことだ。

スーツを着た自分が、どうにも我慢できなくて結局それで心が折れた。

同じ服という条件で、体型ばかりが違うのだから、そこから劣等感が生まれても仕方がないのだ。特に制服なんて、サイズが3サイズくらいでしょ。

卒業後、ようやくダイエットするなり、自分が痩せて見える私服を学んで、ちょっとは自信がついたなって時に、真っ黒おそろいスーツで、心を打ち砕く。

スーツはまあ、お金をかければそれなりに揃ったものが手に入るけど、まだ20そこそこの人間に、はるやま・青山以外のスーツなんて、思いつきます?フレッシャーズよ。

たかが就職活動のためだけに。収入もないのに。恐ろしい。それくらい、身に着ける物って、その人に大きく影響を及ぼすんだ。

 

この本でもさ、まともなスーツを着たことなくて、私服もサイズ感もめちゃくちゃ、そもそも服屋が怖いって、びくびくオドオドしていた中年男性たちが、自分にピッタリの、最高なスーツを試着した時の、顔の輝き様!!

そう、着るものって、本当にその人の顔の輝き、内側にまで影響するのよ。

 

この本では、お高いスーツのお店にて、ソムリエと呼べるくらいの立派な店員さんのセレクトで、ダサい男性を別人へと変えていく、いわゆるスーツマジックが効くのだが、一方、販売されているレディースのスーツって、本当につまらない。

スーツが好きな著者も、6万出したスーツで失敗している。

男性のスーツは格好いいのに、レディースだけは許せない。

現場スタッフか、就職活動か、どうしてこうして、女のスーツというものは、コレじゃないイメージが先行してしまうのだろう。

女にスーツは似合わない。これに尽きる。だからこそ、いやそもそも、女のフォーマルは、スーツではない。

事実、著者の内澤さんも、サマになるスーツが売ってない・・・とお嘆きのよう。

スーツ、はともかく、スラックスやジャケットで仕事をしている女性って、大抵がスラっとした背高ショートヘアさんか、小柄でもすごくシュッとされたスリムな方(良く言えば少年体型、悪く言えば貧相)だったり。

中年って言えば、結構胸回りが豊かな方が多いから、どうしてもシャツが厳しかったり、肩が凝ったり。胸元の格差問題は深刻よ。

売ってないし、身体つきの範囲が広いし、妊娠出産と、体型がそもそも変わるからねぇ。胸のサイズも短期間で変わるというし。

お高いスーツを作って売ったとしても、それを買ってくれる人って、どれだけいるんだか。

ニッチな需要でしょうかね。年代・キャリアにもよるか。

ビジネスで着るなら、スラックスにブラウスとか変形カーディガンとか、とにかく上下をそろえない方が、それっぽく見える気がする。

どうしても、上下をそろえると、途端に冠婚葬祭感が出る。入学式か、葬式か。真面目なイメージ。若けりゃそれもいいけど、威厳はまず出ないだろう。

 

ま、いずれにしても、スーツにはいい思い出がひとつもないから、あまり関わりたくはないけど、どうせ買うなら、洒落た奴がいいという見栄だけはある。

仕事着だか喪服だか分からんような黒スーツは、仕事着なのか喪服なのかハッキリしてくれ。

そんな、私のスーツにまつわる思いを、思い出しつつ読み進めていった。

 

男性のスーツ姿にときめくとか、道行くサラリーマンの着るスーツはことごとくサイズが合ってないと嘆くとか、そういうことはスーツフェチでないから分からないけれど、スーツを着て違和感がない体型をしている男性って羨ましいなとは思う。(要は、もっと上に伸びたかった)

 

『着せる女』 内澤旬子