時にひきこもる思考

考察とnikki 一言で言えば、ただのエッセイ

逃げのカーディガン

最近、めっきりカーディガンを着なくなった。

昔の職場は来客が多かったせいもあって、ひざ丈スカートにシャツやニットの上からカーディガンを着ることが多かった。若かったからね。

というよりも、ほとんど年がら年中カーディガンを羽織っていた。夏はTシャツにカーディガンだ。若かったんだよ。

 

そのため、季節ごとに3、4種類のカーディガンが手元にはあった。

春と秋は淡い色、夏は七分丈、冬は厚手のふわっとしたカーディガンで、毛が抜け落ちまくって黒いスカートがえらいことになった記憶が私の中にある。

その時のカーディガンは、だいぶくたびれ、毛羽立ちに毛玉にどんどん生地が薄くなっていき、愛が一気に醒めた頃に処分した。


前の職場の記憶と共に捨て、今では七分丈がかろうじて2枚ほど。

中に着るシャツやニットより、カーディガンの方が枚数が多かったくらいだ。

 

それなのに。


気付けば、この秋はいわゆるカーディガンを一度も着なかった。

いわゆる、というのは、あくまで一般的なクラシックな形のカーディガンのこと。もちろん、Vネックではない。上までボタンで留める「クルーネック」というやつ。

そのカーディガンって、わりと細身で、中にシャツ1枚くらいしか着こめなくて、丈自体も短い。

 

カーディガンって、万能だと思っていたわけ。

ボタンを全て留めたら、カットソーのようになるし、カジュアルでないから袖も長すぎない。

前を開けて着るとサマになるし、私はよく、一番上だけ留めてたけど、それにより、はだけることもない。肩から落ちることもない。

クラシックな形だから、仕事でも使いやすい。ピッタリ目だから、だらしなくならない。

休日は、ボトムをカジュアルなものに変えれば、それでよい。

流行り廃れのない、永遠のデザイン。

メリットばかりだと思っていたのに。

 

今ではそのメリットが全て裏目に出る。

・クラシックだからこそ、その代わり映えのなさが、つまらない
・丈の短さは、腰回りを気にしてしまう
・ピッタリ目なサイズ感は、厚手のものを着こむと、肉感が出やすい
・肩幅が目立つ方だと、肩の線がおかしなところに出る
・わざわざカットソーにして着ては、そもそもカーディガンである必要がない
・一番上だけボタンを留めると、一番上のボタンだけが消耗されていく
・そもそも、そんなキレイ目ファッションは流行っていない
・仕事にしても、よほど細身の人しか襟付きシャツは似合わないし、肩が凝って不健康
・そんなクールでスタイリッシュなスタイルの人は、そもそもカーディガンの上だけボタンを留めるなんて、そんな保守的な着こなしは似合わない

 

正直、時代のせいもあって、デメリットばかりが上がってしまう。つーか、デメリットしかない。

それほどまでに、クラシックな形のカーディガンは、もう時代遅れなのだ。


その代わりに、今市場に流れているカーディガンは、もっと緩やかな着心地で、首元もVの字のように開いている。何よりボタンが大きい。肩のラインがあいまいで、肩幅に関係なく着られる。

この手のカーディガンは、シャツと合わせて着ることを想定していないだろう。

クラシックなカーディガンに襟付きシャツを着ている人は簡単に想像つくが、ざっくりとした今のカーディガンにシャツを着ている人を想像するのは、なかなかに難しい。

そんな着こなしをしている人を、見たことがない。

 

でもお店には、その手のカーディガンばかりが並んでいる。

仕事用のコンサバティブなカーディガンは、それ用の店に行けばよくて、もっとカジュアルにカットソーの上に羽織りたい人は、そこら辺の店でも十分手に入る、というわけだ。

それくらい、私服のカジュアル化が進んでいるし、ネット通販の台頭で、試着せずとも、多くの人が「きつい」「サイズが小さすぎ!」「返品よ!!」とならないために、ゆるやかなシルエット服ばかりが増えている、ということだ。

 

誰でも着れるゆったりサイズ。オーバーサイズブームは、ネット販売によってかなり背中を押された形で流行した。

クラシックないわゆるカーディガンでは、このネット社会は渡っていけないんだと思う。いや、日本人は上半身は華奢だから、案外大丈夫か。

 

そもそも私がカーディガンを着まくってたのは、単に、シャツやカットソー1枚では心もとなかったためだ。

なんか、1枚だけで着る服に慣れなかった。

胸の肉やお腹の肉が、気になってしょうがなかった所為。若かったから、自分に意識が向きすぎていた。

それを、カーディガンを着ることで、ちょっと目線をそらさせるというか、ごまかせたような気がしていたから。

 

最近は、それこそ緩めのカットソーが多く売っているから、そういった贅肉が、服の上からでは目立たなくなった、そういう理由もあって、カーディガンと距離ができた。

もう、別にカーディガンを毎日着なくてもよくなったわけだ。

結局、保守的なのだ。カーディガンって。

 

そう、贅肉が隠せるほどのゆとりのあるカットソーを下に着るには、いわゆるカーディガンでは、タイトすぎるのだ。。。